菊五郎・菊之助 役者のことば

2015年10月9日 [松緑のおじさん」尾上菊五郎

七月・八月・九月とお休みを頂きましたので三ヶ月ぶりとなる歌舞伎公演への出演をしております。

今月は二世尾上松緑二十七回忌追善狂言の、昼の部は「人情噺文七元結」で左官長兵衛を、夜の部は「髪結新三」の肴売新吉を演じております。

松緑のおじさんは大切な芸の師匠でありました。また、父・梅幸と本当に仲好しでしたので子供の頃から可愛がって頂きました。お宅に伺っておじさんとおばさんの間で川の字に寝て五連泊した事もあります。息子の辰之助さんは別の部屋で寝ていましたが…他にも沢山の思い出があります。

「文七元結」の左官長兵衛は松緑のおじさんのもよく拝見しましたが、左團次のおじさんのが記憶に強く残っています。最初に手代文七をやらせて頂いたのも左團次おじさんの長兵衛で巡業でした。登場人物すべてが善人で、悪人の出てこない気分良くご覧頂けるお芝居だと思います。ただ長兵衛はほぼ出ずっぱりなので演じるのは疲れます(笑)。

「髪結新三」は松緑のおじさんが本当にお好きでした。ちょくちょくお宅に伺っていた時、いつも新三の台詞を口にして、所作、小道具の事など色々なお話をして下さいました。直接教わってはいませんが、伺ったことすべてが頭に残っていて初めて演じる時もすんなり入り込めました。そのお芝居にどうしても出演したくて…肴売新吉を何度も演じている弟子の菊十郎に聞いて演じています。

この興行をたくさんの方にご覧いただけます事はおじさんも喜んで下さるでしょうし、少しでも恩返しになればと心して勤めております。

是非、歌舞伎座にお出掛け下さいませ。