今月は大阪松竹座で、初役を三役勤めています。いずれも今の私にとっては、大役ばかりです。役者が一歩、一歩、階段をのぼっていく過程ではありますが、全力をつくしております。
時蔵のお兄さんの八重垣姫、錦之助のお兄さんの勝頼とご一緒させいただく、『十種香』は、八重垣姫が三姫のひとつであることもあり、丸本物の大作です。私は、平成十二年の歌舞伎座で八重垣姫を勤めておりますが、その作品の格調の高さに圧倒された覚えがあります。自分が濡衣をとは、正直いって思ってもおりませんでしたが、とてもいい機会を与えてくださり、勉強させていただいています。
『髪結新三』の勝奴は、自分から父に、やらせていただきたいと願い、実現した役です。女方を中心に勉強してきましたが、いずれはと思ってきました。菊五郎の家に生まれた以上、父の当たり役を継承していくことも、大切な仕事だと思っています。いつか新三をつとめるためには、父の背中を見ながら、江戸の粋をつぶさに体験しておきたいと思いましたので、あえて、「やらせてほしい」と願いました。いざ、舞台にあがってみると、父の芸を盗むどころか、自分なりの勝奴をつくりあげることに必死です。
さて、『摂州合邦辻』の玉手御前でございます。昨年の九月、文藝春秋の方々と取材で、大阪の合邦堂を訪ねました。祖父梅幸、父菊五郎と続いてきた家の芸ですから、いずれは自分もと思っておりましたが、まさか、こんなに早く機会が回ってくるとは思いませんでした。玉手は「出」から、落ち入りまで、女性のさまざまな面をみせます。現代の女性だったら、どのようにこの短い人生を懸命に生きるのだろうと考えるようになりました。
玉手御前は、私の役者としての人生をともに歩んでいく役でございます。ぜひ、ご覧いただき、未熟な役者の精一杯の舞台を見届けていただきたいと存じます。
ありがとうございました。
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