菊五郎・菊之助 役者のことば

2010年7月7日 巡業の楽しさをいっぱいに感じて 尾上菊之助

今月は巡業公演に出演しております。
以前巡業に参加いたしましたのは、平成十五年ですから、七年前になります。
今思えばそのころの自分は、日本各地にお邪魔させていただいていたにも関わらず、舞台に集中することだけで精一杯で、旅のおもしろさ、その楽しい雰囲気を、あまり感じていなかったように思います。

巡業公演の楽しさを考えますと、まず普段なかなか劇場にお運びいただけないお客様にお会いすること。秋田県の康楽館は3日間公演させていただきますが、その他の日はすべて毎日違う劇場で演じます。毎日、舞台の大きさはもちろん、客席も異なりますから、その空間にあった芝居を作り上げなければいけません。これは役者にとって大変、大事な修業の場となります。
また、幕内のことを申しあげますと、今月の公演に携わるすべての人が、まるで大家族のように3日と空けずに大移動するのも巡業ならではのおもしろさです。
普段は劇場の楽屋もそれぞれに割り振られることが多いので、先輩方と御一緒する時間は限られています。ですが、巡業ですと楽屋は4~5人一緒の部屋です。移動の時間も含め、。自然に昔の芝居の話や芸談を聞かせていただく貴重な時間が出来るのも、巡業ならではの楽しみです。

今月は、『一條大蔵譚』京と『棒しばり』太郎冠者と次郎冠者を勤めさせていただいてます
京は、昨年京都の顔見世で勤めさせていただいて以来ですから、半年ほどで再び同じ役を演じるのは、意外にめずらしいことです。
源氏再興の為に尽くした家来の、お家を大切に思う心を大事に勤めていきたいと思っております。毎日父・菊五郎の大蔵卿と同じ舞台を踏んでおります。いつの日になるか分かりませんが、大蔵卿を演じさせていただきたいのが夢です。

『棒しばり』は、先輩方の舞台を拝見させていただいて、「面白い踊りだな。いつか自分も演じてみたいな…」と憧れておりました。
今回は、松緑さんと、太郎冠者と次郎冠者を交互に演じます。性格の違うふたつの役を、集中的に両方演じさせていただく機会に恵まれて、とてもありがたく幸せです。
踊りの名人の、六世菊五郎と七世三津五郎丈がお作りになられたその踊りが、先輩方に受け継がれて、現在、私が松緑さんとともに、踊らさせていただいている。身が引き締まる思いと同時に、一公演、一振り、一台詞、丁寧に演じてまいりたいと思っております。

日本各地にお邪魔させていただき、その土地の空気や食べ物を、いっぱいに感じて舞台に立たせていただきます。
みなさまがお住まいの近くに伺いました際には、是非劇場にお越しいただければ嬉しく思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。


2010年7月1日 巡業 尾上菊五郎

本日、大田区民ホールアプリコで、公文協松竹大歌舞伎中央コース(巡業)の初日を迎えました。

巡業は、スタッフ、弟子等周りの皆がとにかく大変です。

荷物を開けたかと思うと、終演後すぐに片づけ次の目的地に…。それも、汗だくの洗濯物を抱え毎日毎日移動していかなければなりません。

昔は交通網・交通の便も良くなく移動日で丸一日、二日あった日もありましたが、今日では交通の発達に伴い、本当に日本が小さくなった気がします。

私にとりましては7年ぶりの巡業でございます。

「一條大蔵譚」の一條大蔵長成を演じます。

公家としての品格、侍、造り阿呆の変わり目をはっきりと演じたいと思います。

難しいけれど、面白い、やりがいのあるお役でございます。

この一條大蔵長成は昨年12月の京都南座顔見世で秀調さんの鳴瀬以外は、今回と全く同じ配役で演じました。

巡業で、舞台機構が違うから演じ方を変えると言うことは全くございません。

44年間続いています公文協松竹大歌舞伎ですが、各地の会館で歌舞伎を演じる数少ない機会でございます。

いつも通りの歌舞伎を各地の皆様にご覧頂き、お一人でも多くの方が歌舞伎に興味を持ち、本公演にも足をお運び頂ければ嬉しいかぎりでございます。