菊五郎・菊之助 役者のことば

2010年4月1日 桜の花の季節  尾上菊五郎

桜の花の鮮やかな季節となりました。

四月は、歌舞伎座の第二部「三人吉三巴白浪」のお嬢吉三と、第三部「助六由縁江戸桜」の白酒売新兵衛に出演致します。
お嬢吉三は弁天小僧とよく比べられますが、弁天小僧は題目の通り小僧(男)、お嬢吉三は精神的には女。演じ方、心持ちは全く違います。
白酒売新兵衛は最初は父に教わりました。やわらかみのある立役で、笑いを取りすぎてもいけません。何しろ助六のお兄さんですから…

そして、四月でいよいよ歌舞伎座も三年間なくなります。
とは言え、五月は大阪松竹座での團菊祭、七月は公文協中央コース(巡業)がございますので、感慨深い気持ちはあまりなく、
次の月次の月へと気持ちは向っております。
歌舞伎座はなくなりますが、歌舞伎は続きます。役者は働きます。
変わらぬご後援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。


2010年4月1日 思い出の歌舞伎座  尾上菊之助

今月は「御名残木挽闇爭」に出演したします。
歌舞伎座のさよなら公演最後の月の序幕に、先輩のお兄さんがた、同世代の皆さんと御一緒に舞台に立つ喜びを感じながら、稽古をいたしております。

今月の楽屋は、大変、込み合っております(笑)俳優祭のような部屋割りです。
いつも先輩方が一人で入ってらっしゃる楽屋も、三人、四人部屋となりました。
名題下さんの部屋は、現在の歌舞伎座が建って以来の人数が入っていると聞いております。
歌舞伎座建て替え前に床が抜けるんでは…と、笑い話になっております。
ただでさえ混み合っているのですから、出番が終わった役者は、楽屋にのんびりとはいられません。
序幕が終わりましたら、先輩方、のお芝居を見させていただく時間をいただいたと思い、舞台を何度も拝見し勉強したいと思います。

「初お目見え」で祖父梅幸、父菊五郎が、黒四天で見守ってくれたちびっこ弁天小僧が思い出されます。
それからずいぶん、長い時間をこの歌舞伎座で過ごしてまいりました。
初舞台は、「絵本牛若丸」でしたが、六歳の私は、何もわからないままま父の肩車で花道を引っ込みました。
菊之助襲名、「NINAGAWA十二夜」思い出は尽きることがありません。新しい歌舞伎座が出来てからも、私は、自分の思い出を大切にしていきたいと思います。

二階のロビーには、九代目團十郎、五代目菊五郎の銅像があります。また、上手よりには、祖父梅幸が「藤娘」を演じた油絵が飾ってあります。
そして、三階の客席のロビーには、私がお目にかかることのできなかった大先輩たちを含む歌舞伎俳優のみなさんの写真が掲げられています。
こうした先輩方が積み重ねてきた芸の重みを思うと、歌舞伎の奥深さに圧倒される思いがいたします。
ですが、思い出に耽っているばかりではいけません。ほんの一歩、いや半歩でも前に前に進んでいけるよう日々精進してまいります。